ちょこっと (=^・^=)いずみ：大切な人
2020-10-02
大切な人
一周忌――。
昨年10月2日、せせらぎユニットに最初に入居されたSさんが亡くなられました。15年近く入居されていたのですよ。入居当初は物忘れがありましたが、日常動作はほぼ自立。ただ、お金とお家が心配で「私、お金はあるの？」「いつ家に帰るの？」とひっきりなしに尋ねられ、当時は質問攻めの毎日でした。手を変え品を変え、納得して頂くように試みましたが、一旦は落ち着いてもゾンビのように復活し、また同じ事の繰り返しが始まります。Sさんのおかげで、他の入居者さんから繰り返し同じ事を言われても、何度でも答えられるように鍛えられました。
月日は流れ、ある日Sさんは転倒して、左大腿骨頸部を骨折されました。退院後、すぐに「あれっ、何で足が痛いのだろう？？」と言いつつ、首をかしげながら立ち上がって歩かれるのです。その度に職員皆でずっと傍らに付き添いました。その甲斐あってSさんはすぐに一人で歩けるようになりました。Sさんのおかげで歩き周る入居者さんに気長に付き合えるようになりました。
さらに月日が経ち、やがて歩けなくなって車椅子の生活となりました。日中の歩き周りは止みましたが、夜間、横になった状態での徘徊が始まりました。ベッドに臥床すると、頭側に上へ上へ動いてしまうのです。危ないので見守りしやすいリビングにお布団を敷いて休んで頂きました。夜間、リビング内をまるでルンバのように動き回っておられました。
そして、亡くなる前の2、3年は赤ちゃんのように小さく可愛くなられました。お元気な頃より、手から砂のようにこぼれていく言葉をご自分の内にとどめる呪文のように、自分のお名前をつぶやき続けてきたのですが、その頃は少し舌足らずに「さあたん、さあたん」と繰り返されるようになっていました。また、体の大きな男性職員に対しては「シャーッ！」と威嚇するなど、どんな仕草も本当に可愛く、皆に愛されるおばあちゃんになりました。最晩年、見た目は赤ちゃんでしたが、中身は当然高齢者ですので、ご飯が食べられなくなったり、お熱が出たりと体調を崩される事も次第に増えてきました。一度入院したら、もうホームには戻れなくなっちゃうのでは…という心配から、必死で対応をしたのを思い出します。
Sさんは本当に色々あった方でしたが、最終的に私たちにとって、とても大切な存在となりました。「この人のために何が出来るのだろう」「どうしたら笑ってもらえるのかしら‥」。思いやる気持ちから、色々学ぶ事が出来ました。グループホームでの暮らしを通じ、向き合い、見守り、一緒に様々なことを積み重ねる中で、入居者さんと職員がお互いを大切な人と思えるような関係が自然に築けたらいいなと思います。
Sさんがいなくなって本当に寂しく、いまも何か物足りない毎日です。時々、天国から「さあたん」と呼び掛けてくれればいいのになぁ☆彡
グループホーム ソフィアいずみ 泉野 かおり
